治験参加者に支えられるワクチン開発
治験参加者に支えられるワクチン開発
前回の記事では、ワクチン接種の大切さをお伝えしました。しかし、残念ながらまだワクチンが開発されていない、重い病気もたくさん存在します。まさに今、世界では新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン開発が、今までにないスピードと規模で進められています。では、そのワクチンはどのようにして作られるのでしょうか。
ワクチン開発の流れ
①基礎研究
大学や企業の研究室で、新しいワクチンの候補になる物質を探します。効果だけでなく、製造のコストや化学的な安定性といった視点でも選ばれます。接種費用が高すぎたり、効果がすぐになくなる物質はワクチンとして使えません。
②非臨床試験
ワクチン候補が見つかれば、まずは様々な大きさの動物を用いて、薬のデータを取得し生態への有効性や安全性を評価します。その場合、どのような効果があるか、毒性はないか、作られる抗体量は十分か、などのデータをとります。
③臨床試験
有効性が期待でき、安全性にも問題がないと考えられ、非臨床試験をパスしたワクチン候補だけが臨床試験へ進みます。この段階で初めて人に投与されますが、動物と人では体のしくみが大きく異なるので、試験は4つの段階(phase)に分けて、慎重に進めます。
・Phase1: 少数の健康な成人に候補物質を接種して、治験薬の安全性および体内動態(薬物の吸収、分布、代謝、排出)などを確認します
・Phase2: ワクチン接種が必要な少数の人を対象に、用法・用量(どのくらいの量をどのようなスケジュールで接種すれば効果があるか)を確認します
・Phase3:接種対象を数千人に広げ、効果と安全性を大規模に確認します
・Phase 4: 市販後のワクチンに行われ、引き続き安全性や適切な使用法などを確認します
④承認審査
全ての試験をクリアしたワクチン候補は、有効性と安全性について審査が行われます。厳しい審査をパスして、ようやく新しいワクチンとして接種が可能になるのです。
ワクチン開発には治験参加者の存在が欠かせません
新薬の開発にはさまざまな障害が立ちふさがります。無事に承認されて薬になる確率は3万分の1ともいわれています(*)。ワクチンは健康な乳幼児から高齢者が接種するため、治療薬と比べてさらに慎重な安全性評価が必要です。
通常の治験に対しワクチンの治験の特徴は、一般的に長期に渡ることが多いです。参加者の安全のため、通常6ヶ月から1年程度モニタリングが行われます。
世界の健康を支えるワクチンの開発には、患者さんだけでなく健康な参加者の協力が不可欠なのです。当社では、参加いただく皆様の安全を第一に考えて、様々な治験に取り組んでいます。
(*)日本における成功確率